『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』アニメメイキングセミナー追加質問回答

2019年5月2日

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』アニメメイキングセミナー(3月21日開催)
セミナー開催当日、時間の都合でお答えすることのできなかった質問分として、参加者の方から送っていただいた追加のご質問に、ご登壇者3人の方からご回答をいただきましたので、ここに掲載させていただきます。

*事務局にて、アニセミ(アニメメイキグセミナー)として取り上げる題材・テーマに沿っているものを選び、ご登壇者にお渡ししています。
送っていただいたすべてのご質問は掲載されていません。ご了承お願いいたします。
*ご登壇者からのご回答は迅速にいただいておりましたが、事務局の掲載準備に時間がかかってしまいました。お詫びいたします。

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』アニメメイキングセミナー追加質問回答

 

Q ホワイトボードに貼ってる絵コンテを切り貼りしたものの中に、同じシーンがいくつかあったと思うのですが、アレはサンプル的にそうなっていただけでしょうか?それとも何か制作上の理由があったのでしょうか?

▶会場でホワイトボードに貼り付けたものは、実物のコピーを使ってサンプルイメージとして再現したものです。完全に再現したものではありません。ただ、試行錯誤の過程では重複していることもあります。(古川監督、以下Fと表記)

 

Q 舞台少女の変身バンクはもし制作のキャパシティを越えなければ華恋以外の舞台少女のバンクも制作されていたのではと思うのですが他の舞台少女のバンクを作ることができる場合、一番作りたいキャラクターは誰でしょうか。

▶この作品のテーマとして、主人公の華恋が自分のきらめきを再生産させるシーンであり、最終回まで貫くビジュアルです。衣装替えであると同時に、単なる衣装替えではなく、キャラクターと作品のテーマを表現するものなので、ほかのキャラクターの場合では、別のテーマになるかもしれません。(F)

 

Q レヴュー曲について質問です。「世界を灰にするまで」のような厳かな曲から「恋の魔球」のようにジャズっぽさのある曲まで振れ幅が非常に大きいのがレヴュー曲の特徴の1つでもあるかと思いますが、その中でも一番作るのが難しかった曲は何ですか?
レヴューの演出、作詞、作曲の観点からそれぞれその理由も含めてご教授頂きたくお願いいたします。

▶全てのレヴュー曲において、難度はどの曲もそれぞれの方向性で天井に張り付いた状態なので、難度は正直変わらずという認識です。あえて難度を設定するなら作曲/編曲の尺の長さ(= 工程数)が増えると難度は必然的にあがるので 「The Star Knows」、「恋の魔球」、「RE:CREATE」は作曲/編曲者は、これ完成するのか??という絶望の壁と向き合っていたのではないでしょうか?

おそらく各自、過去作った曲の中では最長尺ないかと思います。上記の3曲に関しては、楽曲のテーマを端的に言うと、「The Star Knows」はクラシックな交響曲、「恋の魔球」ビックバンド、「RE:CREATE」は泣きメロの感動曲 でもアレンジのギミックが効いた曲。という大枠で制作を進めました。「世界を灰にするまで」 の難度は山田の血迷ったディレクションのせいで勝手に難度上げてしまいました。#12「スタァライト」も長尺ですが、劇伴のモチーフがあったのと、中々ギリギリの進行だったので、作詞/作曲/編曲の労力や苦労をさておくと、逆に火事場のなんとかの状態で、意外とすんなり作れた曲かと思います(苦笑)

(山田公平 音楽プロデューサー、以下Yと表記)

▶作詞の面では2話レヴュー曲の「The Star Knows」が難しかったです。後半、歌の掛け合いも、アクションの入れ替わりも激しいので歌い分けのつじつまを合わせるのに苦労しました。セミナー中にお話もしましたとおり、画面にキャラが出ているときにそのキャラが歌うべきで、しかし曲ではmelo1とmelo2の人が画通りには入れ替わらないのです。ですので、後半掛け合いの中の前半は純那(melo1)を追っかける華恋(melo2)、後半で入れ替わり華恋(melo1)を追っかける純那(melo2)、として歌うパートごと入れ替えました。

(中村彼方 劇中歌作詞、以下Nと表記)

 

Q レヴューシーンの舞台少女のダンスのような動きやそれを捉えるカメラワークについて、
何かモデルやモチーフとなったものがあれば伺いたいです。

▶海外のバレエ団の映像や舞台もののショーの映像などは、制作中にデータとして確認することなどはありました。(F)

 

 

Q キャラクターの誕生日はどのようにして決めているのですか?

▶脚本会議に出席するメンバーの話し合いでキャラクターの印象などを考えなら決めました。アニメの演出に関係することとしては、放送開始日をななの誕生日とすること、放送終了日を華恋の誕生日とすることは、ストーリーとの関連性も含めてリアルタイムでの視聴体験を盛り上げるために設定しました。(F)

 

Q 限られた話数の中で九人分の成長を描くことは非常に難しいことかと思います。お話を考える中で、本当はもっと深掘りして書きたかった話、泣く泣く削った話があれば教えていただきたいです。

▶話数と言うよりも、演劇学校というディテール、たとえばB組のことなど、もう少し深堀りすることができたらということはあります。それをやることで、一般的な“美少女バトルアニメ”とは違ったものとして、こういう学校のリアリティを感じてもらうことで、 “舞台にかける少女たち”というディテールがより深く描けていくように思います。キャラクターを推し出すところを優先させたために、せっかく舞台ものがテーマのアニメをつくっているにも関わらず、舞台や演劇の練習、衣装や大道具のディテールは、少し削いでしまった部分ではあるので、そこはもう少しやりたかったところと言えます。(F)

 

Q 石動双葉の武器名について。dterminate(決定、確定)に接尾辞を付けて人やモノを表すならばDeterminatorやDeterminerになると思うのですが、なぜ双葉の武器名は「Determinater」となっているのでしょうか?この綴りにした何か特別な理由があるのでしょうか?

▶脚本の樋口さんに考えていただきましたが、“言葉の響き”で決めたことだと思います。(F)

 

Q メモリアルブック等を読む限り、スタッフの皆様は演劇やミュージカルといったものに深く関わられている方ばかりではないというふうに感じたのですが(ちがったらすみません)、いわゆる演劇モノを作るにあたってそういった部分で苦労されたこと、あるいは逆にプラスに働いたこと等ありましたら教えてください。

▶最低限の勉強、ネルケプランニングさんへの取材などはさせていただきましたが、「演劇学校のレッスンの内容」「B組のディテール」のような専門的なことが詳しくはわからないというのは苦労した点ではあります。ただ、舞台に詳しい人から見てではなく、そんな自分たちが感じる舞台っぽさみたいなものをカリカチュアすることが、大多数の舞台に詳しくないであろう視聴者の方(=普通の人)がわかりやすいと思えるものだろうと捉えて、一般的な印象を拡張していくように気を付けて進めていました。(F)

 

Q 色について。キャラにはそれぞれを表す色があります。ひかりは青。華恋は赤。そしてポジションゼロのテープの色は紫。戦闘シーンでひかりや華恋たちが刃を交えた時の火花は同じく紫でした。それぞれの色はなぜ紫となったのでしょうか。

▶テープの色はピンクです。テープの色も火花の色も、背景美術の中でいちばん美しく見える色を選択しています。(F)

 

 

Q 最近は特定のシーンでキャラをCGで動かすことが増えていますが、なぜスタァライトではそうせず、終始手描きにこだわったのでしょうか?

▶企画の初期段階では部分的には3DCGのモデリング案も考えましたが、費用対効果、スケジュール、作品のテーマなどを考え併せて、今回は自分がコントロールをしやすいことを優先させて、作画で臨むこととしました。(F)

 

Q 2nd Liveでアニメのレビューシーンが再現されましたが、アニメを作っているときにご自身が作られたアニメが実際に再現されることは予想していましたか?

また、ご覧になって新たな発見や驚きなど感じたことを教えていただきたいです。

▶予想していませんでした。実演を観て二層展開式の価値をほんとうに感じました。キャストと音楽チームが、アニメから受け取ったバトンを、さらに観客のみなさんに渡してくれたと感じることができて嬉しかったです。キャストもスタッフも、みんなが「届ける」ということに注力しているのが、この作品の“極み”だと思いました。ほんとうに単純に嬉しかったです。

完全再現は難しいとはいえ、キャラクターや歌、ライトアップなど数々の演出で、可能な限り視聴者がアニメーションで受けたであろう感情の高まりや、感動みたいなものを、もう一度“再生産”しようとしてくれていると伝わってきて、こちらもまた感動しました。(F)

 

 

Q 櫻木麗先生はキリンのオーディションの存在を知っているのでしょうか。第8話、華恋と先生とのやり取りの中で、先生が「必要な書類は揃っている」といった旨のセリフを言います。
その書類にはキリンの特徴的なハンコが押されており、この普通ではないハンコを、手続きに必要なものとして判断しているので、キリンのオーディションの存在は知っているのではないか、と考えております。

▶8話ではなく11話のことですね。とくにそういうことではないです。11話のあのシーンでのポイントは、とりあってもらえない「無常さ」のようなことを表現することが重要です。キリンと麗先生がつながっている、いないは、ストーリー上でも演出上でも意味のないことです。華恋がひかりを失ったことでショックを受け、世界から突き放されたように感じてしまう様子を表現することが目的です。(F)

 

Q 中村彼方さんへの質問です。メイキングセミナーでは、オープニング曲やレヴュー曲の作詞の方法についてお話いただきましたが、アニメのBlu-rayの特典曲は、どのように作詞をなさっているのでしょうか?劇中劇のような、ストーリーが見えるような曲なので、その曲の物語を考えてからフレーズに落とし込んでいるのでしょうか。

▶幸運なことに、アニメの前日譚であるコミック、オーバーチュアの脚本を書かせていただいたこともあり、その中に出てきたエピソードや架空の戯曲をもとにして歌詞を作りました。

「My friend ~Arrie~」は子ども時代のクロディーヌが主演をつとめたミュージカル

「You are a ghost, I am a ghost 〜劇場のゴースト〜」は1年生時の夏休み明けの実力発表会の課題演目

「恋は太陽 ~CIRCUS!~」はコミックでは収録することができなかった双葉がサル回しをすることになるストーリーから作っています。

このように、アニメのディテールからコミックに落とし込んだり、さらに歌詞に落とし込んだりとかなり縦横無尽にリンクさせているところが多々あります。ぜひ見つけてみてくださいね。ということで、コミックの脚本執筆時にストーリーは考えてあるので、200字くらいの簡単なあらすじで楽曲コンペを開催し、そこに歌詞をつけていったという感じです。(N)

 

Q 皆の名乗り口上は固定ではなく、その時の心情や相手によって変わっているのでしょうか。まひるちゃんが華恋ちゃん以外の子とのレヴューでも、あの愛に溢れすぎている口上を言っているのか気になります。

▶変わります。ある意味で、そのときの戯曲にまつわって変化するものなのかもしれません。ただ、そのキャラクターをひとことで表現するものが名乗り口上ですので、キャラクターのベースになっているものは、必ず含まれることになると思います。(F)

 

 

Q 古川監督や皆さまが、ストーリーを構築するにあたって、キャラクター以外で特に意識したことを教えていただけないでしょうか。講演では、制作にあたって、キャラクターを押すことを第一に考えていたとのことでしたが、私としてはストーリーも非常に練られていると感じました。謎解き的なストーリーに特に感銘を受けたので、そういった点について特にお伺いしたいです。

▶誰もが10代ぐらいのときに必ず通ってきたであろう体験やそれに伴う感情を追体験できるように、キャラクターを配置してストーリーも作っています。ストーリーを経ていく中でキャラクターを通して、「あんなときにこういう人がいてくれたら」「こんなときこういうふうに声をかけてくれたら…」と思う気持ちを追体験してもらえるように、つくっていったものです。(F)

 

Q 各キャラクターの背景(家族構成や過去)を描くときに、気をつけた点があれば教えて下さい。

▶キャラクターに愛着を持ってもらうことが大切なので、キャラクターの性質を見せていくストーリーの流れの上でノイズになるようなことは、わざと描いていない部分が多いです。ディテールや設定は、つくればよいわけではありません。つくりすぎてノイズになるようなことは、排除するようにしています。あくまで、主たる目的、キャラクターをキャッチしてもらうために描くことに集中することが大切だと思います。(F)

 

 

Q スタァライト製作中、時間や技術的にオミットしたストーリーや演出で記憶に残るものがあれば教えてください。 また今作の制作を通して培った技術やアイディアから次回作こんな事をやってみたいというものがあれば合わせて知りたいです。宜しくお願いします

▶今回は音楽チームとの距離感が近かったこともあり、自分が持っていなかった音楽制作における知見が拡がりました。可能であれば、この近い距離感をまったく違う作品に生かしてフィルムをつくることがあれば、それは自分でも相当に楽しみにできることです!(F)

 

(追加質問 回答おわり)


講師詳細

古川知宏  Furukawa Tomohiro 
アニメーション監督
スタジオグラフィティ出身、アニメーターとしてキャリアをスタート。『戦姫絶唱シンフォギア』(2012年)『ONE PIECE FILM Z』(2012年)では、原画、作画監督補などを担当。幾原邦彦監督の『輪るピングドラム』(2011年)では、絵コンテ、原画に携わり、『ユリ熊嵐』(2015年)にて副監督を務める。本作 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(2018年)が初監督作品。


山田公平  Yamada Kohei
音楽ディレクター/プロデューサー
アップライツ/アップドリーム代表。楽曲制作、レーベル、マネジメントなど、各方面から音楽制作に関わり、2006年にアップドリームの前身会社アップライツを設立。様々な分野の音楽制作を扱うが、アニソン、劇伴など、アニメーションに関係する音楽制作に数多くの実績を持つ。音楽制作参加アニメ作品では『結城友奈は勇者である』『ラブライブ!シリーズ』『ACCA13区監察課』『SSSS.GRIDMAN』。アーティストでは「三森すずこ」「神谷浩史」「下野紘」「入野自由」などこれまで1,500曲以上の歌曲と100作品以上の劇伴制作に携わる。本作『少女☆歌劇レヴュースタァライト』では音楽制作のキーパーソンとして、劇伴・劇中歌のディレクションを担う。

中村彼方  Nakamura Kanata   
劇中戯曲脚本・劇中歌作詞
作詞家、プロデューサー。少女時代『GENIE』『Gee』、ももいろクローバーZ 『天手力男』等POPSの作詞ほか、『けいおん!』キャラクターソング、『結城友奈は勇者である』シリーズ作詞など、数多くのアニソン作詞も手掛けている。本作 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』では劇中戯曲脚本、オープニングテーマ曲、エンディングテーマ曲、劇中歌の作詞、前日譚となる「レヴュースタァライト オーバーチュア』脚本を担当。

関連講義