『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』 アニメメイキングセミナー 開催レポート「第2部:映像と音楽制作(90分)」 

2019年5月2日

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』 アニメメイキングセミナー  第2部 開催レポート

前半に引き続き、後半(90分)の開催レポートを抜粋してお届けします。


*「第1部:監督・演出(90分)」と「第2部:映像と音楽制作(90分)」に分けて掲載いたします。

「第2部:映像と音楽制作(90分)」

登壇者(敬称略)

古川知宏(監督)

山田公平(音楽プロデューサー)

中村彼方(劇中戯曲 劇中歌作詞)

MC:武井風太

<セミナー(抜粋)レポート>

 

 

登壇者3人の紹介の後、はじめに「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」に関する音楽制作プロセスの特徴についての解説、アニメーション映像における音楽の役割についてのお話が古川監督からあり、続いて山田公平さん(音楽プロデューサー)と中村彼方さん(劇中歌作詞)それぞれによる、OP曲やレヴュー曲制作プロセスの解説へと順を追って講義が進められました。

 

 

【アニメーション映像における音楽の役割】…古川知宏 監督

「たくさんの絵を作画してそれを動かして感情表現しようとするよりも、たった1枚の絵(画)とつくりこまれた音楽を合わせて演出することで、キャラクターの心情を推し出して効果的に場面を描くことができることも多い」。

古川監督は初めにそう言って、それがアニメーション映像に添える音楽の重要な役割のひとつであり、動的な作画表現を駆使すべき箇所、例えばアクションシーンなどに適材適所に作画の労力を注ぐためにも、演出では(絵コンテ段階から)常に音楽を意識して効果的に使うことを心掛けることで、作品全体のクオリティを保つことにつなげているということを教えていただきました。

また、この作品は単なる学園ものではなく“歌劇もの”であり、普通の学校ではなく“演劇学校”がその舞台であることを特徴づけするためにも、通常のアニメとは違うイメージの音楽が必要だと考えて、音楽制作チームへは初期の打ち合わせより、劇伴の参考音楽イメージとして“フィリップ・グラス”(*)の名前を提示するなどして、作品制作の方向性が同じベクトルへ向かえるように、意識やニュアンスなどの共有を重視していた様子などをお話いただきました。

 

*フィリップ・グラス…アメリカの作曲家。リズムの繰り返しやリフレインなど、一定の音型を反復する「ミニマル・ミュージック」の旗手として知られる現代音楽の巨匠。

 

 

【フィルムスコアリング解説~楽曲発注・制作・修正プロセス】  …山田公平 音楽プロデューサー

実制作の上では「フィルムスコアリング(出来上がっている映像、または絵コンテに合わせて音楽制作する)」という手法が多用され、脚本会議に同席し、内容を共有しながら制作を進めること(!)、そしてレヴュー曲のほとんどがそのフィルムスコアリングであること(!)…、これらが異例であり、極めて特徴的なことだったと山田さんからお話がありました。

 

「フィルムスコアリング」とは、動いている絵(画)に音(楽曲)をあわせて制作するスタイルで、絵(カットごと)の尺(時間の長さ、〇分〇秒など)が決まっているところに、楽曲の使用箇所の長さや譜割を合わせて制作しいくことだと説明していただき、今回のセミナーでは、絵コンテでつくられたムービーを見ながらその点も解説していただきました。

 

また、OP曲「星のダイアローグ」を制作する上での指針も紹介していただきました。作曲家(本多友紀さん)への発注時には、スタンダードなものでありながら本作らしさのあるもの、大きな会場でも耐えられる拡がりを感じることのできる音楽性を保持したもの、今までと違うものにチャレンジするつもりで、発注依頼方法自体も通例とは異なる方法でクリエイターの創造性を発揮してもらえるように取り組んだことなど、当初に掲げていた意気込みなどに触れていただきました。

実際の制作プロセスの紹介では、特徴的なテンポについて、近年のアニメOP曲等はbpm (*)160~180くらいの速いビートが多く、8ビート主体のアップテンポロック、ハードコアテクノといった印象が多い中、本作OP曲では、8~90年代の歌謡曲のクラシカルな要素をMIXした曲調を目指して制作を進めたことなどを説明いただき、デモ音源の一部視聴を織り交ぜ、修正指示書などを見せていただきながら、その例示として、「星のダイアローグ」では展開するイメージを拡張するために、セクションごとの変拍子転換(3拍子~4拍子~3拍子~4拍子)を採用する修正をかけたことなどを資料を参照しながら解説いただきました。

 

* bpm=beats per minute   音楽のテンポを数値で示すもの   数値が大きいほうが速い

 

そのほか、レヴュー曲「世界を灰にするまで」「RE:CREATE」についての制作プロセスで使用した絵コンテムービーなどを見せていただきながらの解説もあり、また本番のレコーディング(弦楽器を中心にしたオーケストレーション)の様子を資料映像でご紹介いただきました。

 

【アニソン作詞概論~脚本会議~実践作詞術】…中村彼方  劇中歌作詞

中村さんが携わる「作詞」についての概論として、作詞をする際の創作の方向性には、通常大きく二つの分野があるとの説明があり、ひとつにはJPOPなど実在する人(シンガー、アーティストなど)が歌うもの、もうひとつにはアニソンなどキャラクターや物語の世界観に帰属する楽曲で、それぞれに基盤が異なるということを教えていただきました。通常、JPOPなどの楽曲は、そのアーティストが持っているイメージ、世界観を受け継いで繋げていくような創作プロセスを経て作詞をすることが多く、 それに対して、アニメーション作品に関わるOP曲やED曲、挿入歌などのアニソンに於ける「作詞」の創作プロセスとしては、作品の世界観や作中のキャラクターをいっしょにつくっていく、またはそれを補強していくような創作プロセスになるという解説がありました。

 

また、アニソン「作詞」の実際では、脚本(シナリオ)やキャラクター設定等の資料提供を受けて、その文字情報や絵から、そのイメージを拡張して「作詞」をすることが通常であること、その上でさらに、本作「少女歌劇☆レヴュースタァライト」の場合はより特殊性が強かったことを教えていただきました。

 

本作は歌劇であり、劇中歌を多く必要としていたため、劇中歌作詞担当の中村さんは、当初より脚本会議に出席して臨み、設定、プロット、シナリオができあがるまでの前段階の情報を共有し、その過程で情報の下地として蓄積されてきた膨大な有形無形の資料素材が中村さんの中にインプットされていたことで、各場面の真意や、キャラクターの心情などへの解釈や創造力が深まり、各曲の創作の際に極めて大きな力となったことを教えていただきました。

 

中村さんの作詞創作活動の中でも、作品の根幹にあたる部分をここまで共有できたことは初めてのことだったと明かしていただきました。

 

実践作詞法公開! ~ OP曲「星のダイアローグ」

また、中村さんの作詞の実践スタイルをOP曲「星のダイアローグ」を例にご紹介いただきました。

提供を受けた楽曲音源のシンセメロ(または仮歌)などから、メロディ音(音符)の数をカウントして、00000(ゼロの羅列、下記写真参照)で表した音数表をパートごとにつくり、歌詞の全体量を可視化するまでが第一段階。

打ち合わせ時に撮影した中村さんの作詞ノート画面、 OP曲の作詞が行われた日付の記載も伺えます ↑

この音数表から、Aメロ、Bメロ、C(サビ)などの各セクションの歌詞の分量を把握したのちに、各セクションで何を言うのか、どう展開するか、歌い手(2人以上の場合)は誰か、といった構成を決め、脚本会議中にとったメモや印象的だったキーワードをあてていきながら、試行錯誤を繰り返して詞を整えていく作詞作業を行います。

 

とくに「少女歌劇☆レヴュースタァライト」のレビュー曲では、絵コンテが先にあり、どのタイミングで誰かどんな状態で歌い出すかまで決まっている中での作詞はパズルのような至難さであったことを説明いただきました。(OP曲は、曲が先行)

同様に、レヴュー曲「世界を灰にするまで」「RE:CREATE」についての作詞制作プロセスについても、実際の作詞ノートを見せていただきながら解説いただきました。

 

セミナーのラストは、3人の登壇者の方からメッセージをいただき、質疑応答コーナーにて参加者の方からの質問に答えていただき、セミナーは終了となりました。

 

会場内には、ラフスケッチ、複製原画、絵コンテ、制作時参考資料書籍などの展示や閲覧コーナーが設けられ、休憩時やセミナー終了後に、参加者のみなさんには熱心にご覧になっていただけた様子でした。

(セミナー抜粋レポートおわり)

 

 

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『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』 アニメメイキングセミナー 開催レポート「第1部:監督・演出(90分)」

 

※セミナー開催当日、時間の都合でお答えすることのできなかった質問分として、参加者の方から送っていただいた追加のご質問に、ご登壇者3人の方からご回答をいただきました。掲載はこちらです⇩

▶『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』アニメメイキングセミナー(3月21日開催)追加質問回答

『少女歌劇☆レヴュースタァライト』アニメメイキングセミナー追加質問回答


講師詳細

古川知宏  Furukawa Tomohiro 
アニメーション監督
スタジオグラフィティ出身、アニメーターとしてキャリアをスタート。『戦姫絶唱シンフォギア』(2012年)『ONE PIECE FILM Z』(2012年)では、原画、作画監督補などを担当。幾原邦彦監督の『輪るピングドラム』(2011年)では、絵コンテ、原画に携わり、『ユリ熊嵐』(2015年)にて副監督を務める。本作 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(2018年)が初監督作品。


山田公平  Yamada Kohei
音楽ディレクター/プロデューサー
アップライツ/アップドリーム代表。楽曲制作、レーベル、マネジメントなど、各方面から音楽制作に関わり、2006年にアップドリームの前身会社アップライツを設立。様々な分野の音楽制作を扱うが、アニソン、劇伴など、アニメーションに関係する音楽制作に数多くの実績を持つ。音楽制作参加アニメ作品では『結城友奈は勇者である』『ラブライブ!シリーズ』『ACCA13区監察課』『SSSS.GRIDMAN』。アーティストでは「三森すずこ」「神谷浩史」「下野紘」「入野自由」などこれまで1,500曲以上の歌曲と100作品以上の劇伴制作に携わる。本作『少女☆歌劇レヴュースタァライト』では音楽制作のキーパーソンとして、劇伴・劇中歌のディレクションを担う。

中村彼方  Nakamura Kanata   
劇中戯曲脚本・劇中歌作詞
作詞家、プロデューサー。少女時代『GENIE』『Gee』、ももいろクローバーZ 『天手力男』等POPSの作詞ほか、『けいおん!』キャラクターソング、『結城友奈は勇者である』シリーズ作詞など、数多くのアニソン作詞も手掛けている。本作 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』では劇中戯曲脚本、オープニングテーマ曲、エンディングテーマ曲、劇中歌の作詞、前日譚となる「レヴュースタァライト オーバーチュア』脚本を担当。

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